いら立ち(上) 除染停滞足かせに 国の責務忘れさせない

中間貯蔵施設の建設受け入れを要請し、記者団の質問に答える石原環境相(左)、根本復興相(右隣)ら=昨年12月14日、福島市

■福島民報社 報道部角田守良副部長 45

 県内で昨年行われた首長選で現職の落選が相次いだ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による直接の被災地である、いわき市と富岡、広野両町をはじめ、原発から60キロほど離れた中通り地方の福島、郡山、二本松の3市でも新人が当選を果たした。復旧・復興の遅れに対する有権者のいら立ちが最も身近な政治家である首長に向けられた、というのが専門家や選挙関係者の見方だ。
 確かに震災と原発事故から丸3年が過ぎようとしているのに県内では復旧・復興が進んでいるという実感がない。いまだに約14万人が仮設住宅や借り上げ住宅で不自由な生活を強いられ、先の見えない日々に耐え切れず、命を絶つ人も出ている。依然、非常時が続いているといえる。
 平成24年末の衆院選で圧勝した自民党は民主党政権の震災・原発事故対応にスピード感がないと散々、批判していた。しかし、政権が代わっても政府の動きは鈍い。国の役人は相変わらずの縦割りで前例主義、予算主義に終始している。有権者の間に国や政治家に対する不平不満がたまっていても不思議はない。
 復旧・復興の足かせとなっている最大の要因が除染の停滞だ。除染が進まなければ、県民は安心して生活ができず、風評の払拭(ふっしょく)も産業の再生もままならない。本紙などが昨年12月に実施した県民世論調査では「除染が遅れている」と感じている人が全体の6割近くを占めた。遅れている理由として約半数が「国の責任」を挙げた。
 石原伸晃環境相と根本匠復興相は昨年12月、除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設受け入れを県と大熊、双葉、楢葉の3町に要請した。ただ、原発周辺地域以外の除染は財政面の支援だけで業務は市町村に「丸投げ」の状態だ。前例のない事業への対応に市町村は苦慮している。
 現在、県政全般の取材を担当している。永田町で安倍晋三首相が「国が前面に出て、復興を加速させる」と熱弁を振るう。対照的に県や市町村の関係者からは「時間の経過とともに各省庁の復興に対する責任や認識が薄らいできている」との声が聞こえてくる。
 取材をしていてもそれは感じる。本県の復興に関わる省庁の担当者の中には異動などで震災当時の県内の様子を知らない人が増えた。本県の現状について理解していない職員も少なくない。原子力政策は国策だ。事故の後始末も当然、国の責務であることを忘れさせてはならない。

■除染
 原発事故に伴い避難区域が設定された11市町村の除染は国が直轄で実施している。中間貯蔵施設の整備見通しが立たないことなどから難航しており、環境省は平成25年度内としていた当初の完了予定を断念し、最大で3年遅れる見通しだ。除染計画がまだ策定されず、手付かずの町もある。国が財政支援をする市町村の除染も遅れている。対象となっている33市町村の住宅除染の昨年11月末現在の完了率は4割に満たない。