(9)貴重なパートナー

■いわき市 遠野高生徒会・家庭クラブ(下)
いわき市遠野町の遠野高は小さな集落にある。生徒には住民に対する思いが強く芽生える。地域に密着した生徒会活動が盛んだ。
毎年秋、校庭で開かれる満月祭。子どもからお年寄りまで、月見と地元特産の遠野和紙でできた行灯(あんどん)の明かりを楽しむ。生徒会は全校生をまとめて運営に参加し、行灯約2000基を会場に並べる。平成26年には和紙でウサギ面を作って売り、一大行事を盛り上げた。
こうした取り組みが評価され、同年の「ふくしま高校生社会活動コンテスト」(ふくしま学びのネットワークなど主催)で優秀賞に輝いた。
「高校生の取り組みが地域を元気にしている。遠野高は、まちおこしの貴重なパートナーだ」。同校同窓会長を務め、地元で農業生産法人を経営する平子佳広(62)=昭和46年卒=は後輩の活躍を心強く感じている。
地元産のキクイモや米粉を使った焼き菓子を開発し、県内外で紹介する家庭クラブの取り組みに共感した。OBとして活動を支援したいと、27年1月に「いわき遠野の未来を創(つく)る会」を結成した。地域の商工業者ら約20の個人・団体が名を連ねている。地域おこしのイベントを企画し、遠野高生が焼き菓子を販売する機会を提供したいと考えている。
生徒が県外で地元をPRする経費は県教委の「子どもがふみだす ふくしま復興体験応援事業」の補助金で賄われている。28年度以降、継続して支援を受けられるかどうかはまだ分からない。平子は「公的サポートがなくとも、子どもたちの後押しを続けたい」とアイデアを練っている。
中山間地に位置する遠野町の人口は約5500人。東日本大震災前年の22年から約500人減少した。商店が廃業し、空き家が増えている。住民から「かつてのにぎわいが戻ってほしい」と声が上がる。
遠野高は昭和23年、磐城農高定時制課程として開校した。40年代、1学年3学級だったが、年々志願者が減り続けた。平成7年に1学年2学級に定数が削減されたが、今も定員割れが続く。
生徒会長を務める2年の千葉梨央奈(りおな)(17)は、市内常磐の自宅から家族の送迎で通う。温かく接してくれる遠野の人に出会い、小さな集落が大好きになった。「少しでも遠野のファンを増やすため活動したい」と誓っている。(文中敬称略)