被災地発 日本を元気に 会社社長 鈴木賢治さん 33 いわき出身

■「商売再開する人の力に」
昭和のレトロな風情が残るいわき市平の「白銀小路」が「夜明け市場」として新しい飲食店街に生まれ変わろうとしている。5軒、6軒...。震災で被災した店舗が復活へ集う。
「一日も早く商売を再開したい人の力に」
空き店舗への入居者を募り、8月下旬のオープンに向けて奔走している。
「夜明け市場」は5年目に入り、14店舗に増えた。郷土料理、バー、イタリアンなどの店が昔懐かしい雰囲気の通りに並んでいる。
JRいわき駅から歩いて数分の立地条件も良かった。復興のビジネスモデルとして注目してもらっている。街に活気を取り戻したいという思いが形になってきた。
■「ただ、がむしゃらに」
出店者を募る説明会を開いた時は、どこに開くかすらはっきりしていなかった。当時は20代。説明会に来た人はさぞ不安だったろう。ただ、がむしゃらだった。駅前に活気を取り戻すことが人や街を元気づける-とひたすら訴えた。被災した人たちの負担を少しでも減らしたいと考え、敷金・礼金を無料にするなど思い切った手も打った。思いを理解してくれた人の中から好意的な反応が寄せられるようになった。
■「いかに生きるか」
夜明け市場をつくる過程でさまざまな人と出会い、つながりができた。刺激を受けて視野が広がり、被災地のために-という気持ちが一層強くなった。
福島のおいしい米をより多くの人に食べてもらいたいという思いを一口大のライスバーガー「こめて」に詰め込んで一昨年3月に発売した。今は夜明け市場の経験を生かし宮城県気仙沼市の仮設商店街も応援している。
被災地を元気にしたいという思いは、日本を元気にしたいという考えに行きついた。昨年末、浅草にできた商業施設「まるごとにっぽん」で、全国各地の自慢の逸品を扱うスペースの運営に携わっている。地元が誇る本当においしい食材を味わってもらいたいからだ。
震災と原発事故を経験し、いかに生きていくべきかを強く意識するようになった。
古里いわき、日本、そして世界に-。仕事を通じて恩返ししたい。
