特別な命未来照らす 橋本栞ちゃん 4 福島

■震災の日生まれた子
福島市の主婦橋本幸枝さんは東日本大震災発生直後に、市内の明治病院駐車場で女児を出産した。
家族の運転する車で病院に運ばれ、出産の準備をしていた時に地震が起きた。建物が危険になり屋外駐車場に避難。駆け付けた夫紀明さんの車の中で、幡研一院長らが立ち会い午後3時26分に2944グラムの女の子を産んだ。
「栞(しおり)」と名付けられ、愛情いっぱいに育てられている。
【平成23年4月5日付・4面】
幸枝さんが栞ちゃんの近況を語った。
◇ ◇
「将来はケーキ屋さんになりたいな」と目を輝かせる。
栞はもうすぐ5歳になる。イチゴが載ったケーキやチョコレートケーキが好き。11日の誕生日にはアイスケーキをリクエストされた。私の髪を三つ編みにしてくれるなど、すっかり女の子らしくなった。
3人きょうだいの末っ子で少し甘えん坊。年の離れた高校1年の兄=凌君=と小学5年の姉=奏(かな)さん=の後ろを付いて回る。「しおちゃん」は家族のアイドル的な存在になっている。
■「普通の子、でも特別な存在」
毎年、震災が起きた3月11日が近づくと、報道関係者や被災地支援の団体などから取材や問い合わせが相次ぐ。私たちにとって、誕生日が「3・11」だったというだけで、栞は普通の女の子。しかし、世間から注目を集めるたびに特別な日に命を授かった子なんだと実感する。
少しずつ大人になっている証拠だと思う。知らない人にカメラを向けられたり、話し掛けられたりすると恥ずかしがるようになった。成長した姿を見て、皆さんが明るい気持ちになるのであればと思い、なるべく取材に応じるようにしている。栞が大きくなったら生まれた日のことを話してあげたい。
■「道しるべに」
動くおもちゃが好きで、ミニカーを集めている。女の子なのに...と不思議だった。ある時、夫が「栞は車の中で生まれたからかな」とつぶやいた。家族がどっと笑った。
「栞」には「道しるべ」の意味がある。これからも明るく笑顔の絶えない家庭でありたい。家族の幸せの道しるべとして、未来を明るく照らしてほしい。
