(1)《キャラクター》新発想で心つかめ つきだてやさい工房(伊達)

震災と原発事故から七年目を迎える平成二十九年が幕を開けた。復興や地域創生が叫ばれる中、既存の枠組みで解決できない地域の課題を新たな発想や連携で打ち破ろうとする動きが活発になっている。未曽有の災害を経験したグループや企業が直面する壁をどう乗り越え、前に進もうとしているのか-。挑戦する人々の姿を通して郷土づくりを考える。
伊達市月舘町の農産物直売所「つきだてやさい工房」。二日、買い物客でにぎわう店内を眺める店長の三浦いつぎ(60)の表情は硬かった。活性化の切り札として披露したヒツジのキャラクターの反応が気になる。絵柄を印刷した店の紹介カードを手に取る来店客。「かわいい」「子どもが喜びそう」。まずまずの反応に胸をなで下ろした。
月舘に目を向けてもらうきっかけをつくりたい-。キャラクターの力で消費者の心をつかみ、地域ににぎわいをつくり出す。山あいの小さな直売所の挑戦が始まった。
やさい工房は平成十三年にオープンし、新鮮で良質な品々をそろえている。主婦層を中心に根強い支持を得ていた。だが、開店からちょうど十年目に東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きた。風評による客離れや人気だった山菜類の出荷停止で販売額は激減した。
三浦が店長に就いたのは二十五年三月。開店以来、最大の危機に直面した店の立て直しを託された。JA伊達みらい(現JAふくしま未来)に配送担当として勤める傍ら、直売所の再建に奔走した。物産展への出展や特売日の新設などの工夫を重ねた。二十七年には震災前の九割まで売り上げを戻したが、安定した収益は見通せなかった。
産地間競争に打ち勝ち、地域ににぎわいを生み出すには斬新なアイデアが必要だ-。導き出した答えがキャラクターの活用だった。単なるマスコットではなく、地域の歩みや住民の思いを込めたい。苦悩する中で、中山間地の復興を支援している福島大経済経営学類研究員の服部正幸(30)と出会った。
三浦と服部がモチーフとして選んだのはヒツジだった。現在、月舘にはいない動物だが、人々や地域のこれまでの歩み、直売所を取り巻く人々の人柄を表現できる素材だと信じている。
「特色を生み出して閉塞(へいそく)感を突き破りたい」。希望と夢が三浦を動かす(文中敬称略)