(2)《思索》苦境を覆す切り札 つきだてやさい工房(伊達)

果物や野菜が並ぶ「つきだてやさい工房」の店内。会員の努力で徐々に売り上げは回復しつつある
果物や野菜が並ぶ「つきだてやさい工房」の店内。会員の努力で徐々に売り上げは回復しつつある

 伊達市月舘町の農産物直売所「つきだてやさい工房」では、会員の農家が地場の農産物を安価で販売している。取れたての野菜や果物、地元ならではの魅力あふれる加工品など良質な品々をそろえているが、集客や運営面でハンディを抱える。

 高台にある店舗は幹線道路から離れ、目に付きにくい。専従の販売員はいない。会員農家の平均年齢は六十代と高齢化も進む。そこに東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が追い打ちをかけた。風評による客離れや人気だった山菜類の出荷停止で平成二十三年度の販売額は震災前のほぼ半分の約七百四十万円に落ち込んだ。


 三浦いつぎ(60)が店長に就いた二十五年三月は経営が最も厳しいさなかだった。青年時代、農産物をトラックに積んで各地で売りさばいた行動力を買われた。物産展への出展や特売日の新設などの工夫を重ね、二十七年度の売り上げは前年度比約百万円増の千四百八十万円。震災前の売り上げに、あと百万円で追い付くところまで戻した。

 だが、不安は消えない。たとえ風評を克服したとしても各地に林立する直売所との競争にも勝ち抜かなければならない。「将来を見据えて何か策を打たないといけない。しかも、ありきたりでない一手にしたい」。他店が新製品の開発や企業との連携といった商品開発に力を入れる中、キャラクターの力を借りて活況を生み出そうとする案を思い立った。

 頼るつてはなかった。思案する中、ある物産展の打ち合わせで福島大経済経営学類研究員の服部正幸(30)と出会った。熱心に市内霊山町の復興支援に当たる姿を見ていた。「店に新しい魅力がほしい。キャラクターを作りたいんだ」。思い切って声を掛けた。(文中敬称略)