(17)《始動》生産者の思い運ぶ クールアグリ(郡山)

共同出荷第1便となる野菜を泉田に届けた馬場(右)。地元の農家と農産物の魅力を広める挑戦が始まった=20日午後、郡山市の「しのや」郡山駅前本店
共同出荷第1便となる野菜を泉田に届けた馬場(右)。地元の農家と農産物の魅力を広める挑戦が始まった=20日午後、郡山市の「しのや」郡山駅前本店

 雪が降り始めた二十日午後、一般社団法人「クールアグリ」(郡山市)の共同出荷事業で初めて発送された野菜が、郡山市にある居酒屋「しのや」郡山駅前本店に到着した。初荷は県南地方の会員農家四人が前日に収穫した長ネギや水菜、トマトなど五品目。生産者と消費者が互いに顔の見える距離感で農産物を受発注する中規模流通がスタートした。


 「このネギ、このままかじられるぐらい新鮮だね」。商品を手にした、しのや取締役の泉田将徳(31)は品質に太鼓判を押した。「安全で安心な食材は顧客との信頼感の醸成につながる。生産者の皆さんと一緒に県内の農産物の魅力を伝えたい」。泉田は商品を届けた法人の代表理事馬場大治(29)=郡山市、コンセプト・ヴィレッジ=に取り引きの継続を確約した。

 馬場は前日、注文の入った農家から四時間ほどかけて集荷した。鏡石町に設けた物流拠点で箱詰めし、品質をチェックして当日に備えた。馬場は泉田の反応に安堵(あんど)しつつも事業の継続性を高めるにはより効率的な運営が必要になると改めて実感した。

 共同出荷は鮮度保持のため週三日配送する。馬場とコンセプト・ヴィレッジの社員が役目を担う。販売網や配送地域を広げるには人員や車両などの拡充が欠かせないが、収益の確保が前提となる。このほかにも品質の管理と向上、円滑な受発注…。課題は少なくない。

 「努力する農家が誇りを持って働くことが、百年先の福島の農業につながる」。もう一人の代表理事で果樹農家の大野栄峰(33)=石川町、大野農園=は事業の将来像を描き、「クールアグリ」がその受け皿となると理想を抱く。いずれは物流ネットワークを県内各地に張り巡らせる-。そのためにも次の一手を探る。

 「会員一丸で地道に努力を重ねる。積み重ねが消費者との最短距離を見いだすに違いない」と馬場。理想の実現に向け、生産者の熱い思いを乗せた物流が動きだした。(文中敬称略)=第一部・終わり=