(16)《融合》理想、同世代が共感 クールアグリ(郡山)

農業と農産物の魅力をいかに伝えるか。メンバーは研修や議論を重ね、課題を共有していった
農業と農産物の魅力をいかに伝えるか。メンバーは研修や議論を重ね、課題を共有していった

 一般社団法人「クールアグリ」(郡山市)は平成二十七年三月十一日に発足した。農業プロデュース会社コンセプト・ヴィレッジを営む馬場大治(29)=郡山市=、元モデルの果樹農家大野栄峰(33)=石川町、大野農園=という異色のコンビを柱に、農家や農作物の魅力を発信しようと活動を続けている。

 耕作放棄地の拡大や価格下落、生産者の高齢化、後継者不足など全国共通の課題に加え、県内では原発事故による風評という壁が生産者に立ちはだかる。



 農業への誇りを取り戻し、次世代に選んでもらえる職業にしたい―。クール(格好いい)なアグリ(農業)を目指そうと大野は構想を温めていた。二十六年秋、あるイベントで農業を熱く語る馬場に出会った。「農家のために汗をかいてくれる」と見込んで事務局を頼んだ。

 理想をフェイスブックなどの会員制交流サイト(SNS)や口コミで発信すると、同世代の生産者が呼応した。停滞感、閉塞(へいそく)感、危機感…。思いを同じにする仲間が次第に集まった。活動の方向性を議論しながら「作る人」と「食べる人」の距離を縮める工夫が必要という認識を共有した。

 キリングループの「復興応援 絆プロジェクト」の助成先に選ばれたのも後押しになった。助成金をホームページや販促グッズの制作、定例会やセミナーの開催などに生かした。助成に携わったキリン絆づくり推進室の本村源貴(31)は「《3・11》に直面しても、農業へのこだわりを捨てない福島の若者が経験や発想をぶつけ合う場が必要だと感じた」と支援の狙いを語った。

 会員は中・浜通り、会津の三地方の三十五人まで広がった。生産分野も野菜や果樹、キノコ、畜産など多岐にわたる。共同出荷という流通への挑戦は「地元の農業者と農産物の魅力を県内の消費者に伝える」という目標に近づく新たな一歩となる。(文中敬称略)