(15)《信念》生産者の誇り胸に クールアグリ(郡山)

一般社団法人クールアグリ(郡山市)代表理事で事務局を担う馬場大治(29)=コンセプト・ヴィレッジ社長=は共同出荷開始を二十日に控え、会員農家や発注者との打ち合わせに奔走している。十七日は西郷村の野菜農家鈴木亮太郎(36)=山市農産=と出荷可能な品目の価格や出荷量、配送の流れを確認した。
飲食店勤務から専業農家に転じた鈴木は、おいしい物を食べた人の笑顔への思い入れが強い。ホウレンソウや小松菜など葉物を中心に栽培し、積極的に青果店との直接取引に臨んできた。品質管理はもちろん、経営面でも独自の信念を持つ。
鈴木は法人設立の一年後、代表理事の大野栄峰(33)=石川町、大野農園=や理事の関谷裕幸(45)=白河市、関谷農園=に誘われて加わった。入会は遅くとも「言うべきことは言う。それがより良い事業につながる」と馬場らにもプロ意識の徹底を求める。この日も集荷・配送中の品質維持や収益面への懸念、飲食店への魅力の訴え方などについて活発に意見を交わした。
鈴木の指摘に馬場は「生産者の意見は説得力が違う」とうなる。農業プロデュース会社のコンセプト・ヴィレッジは東京都内では流通事業の実績があるが、県内へは初参入となる。生産者と飲食・小売店という買う側、食べる側の双方にとって何がベストな流通なのか-。自問自答を続ける。
共同出荷は味や鮮度、安全への意識が高い飲食・小売店から統一の発注様式で受注し、集荷後二日以内に発注先に届ける。生産者の名前や扱う品目、栽培面の特色などを発注用紙と商品一覧表で伝え、買い手側は各農家の強みや品ぞろえを把握した上で注文できる。単価は季節や品目ごとに固定する。
馬場は「顔の見える食材を飲食店などに出荷し、若手農家のこだわりや背景を消費者に伝える。福島の食の豊かさを知ってほしい」と意気込み、日に日に自信を深めている。(文中敬称略)