(14)《変革》カッコいい農業に クールアグリ(郡山)

一般社団法人「クールアグリ」(郡山市)は若手農業者の集合体だ。現在の会員は二十代から四十代までの三十五人。個々の生産体制や経営理念に違いはあるが、「農業は稼げる格好の良い職業にできる」との誇りと夢を胸に抱いている。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降は出荷停止や風評など幾多の困難に直面した。従来のやり方では生き残れない-。意識と流通の変革で新たな農業モデルの実現を目指す。
二十日に初の共同出荷を控える白河市の野菜農家関谷裕幸(45)=関谷農園=は法人が掲げる「カッコいい農業を目指す」という理想に共感して仲間に加わった。
大学を卒業後、都内のスーパーで青果販売を担当していた。平成十年に古里が豪雨災害に見舞われた。家業の危機に勤め先を辞めて跡を継いだ。
原発事故後の風評を打ち破るべく、自ら農産物を売り歩いた経験が流通に対する意識の在り方に変化をもたらした。栽培への考え方や商品に込めた思いを伝えれば消費者に理解してもらえる。問題は消費者との距離感だ。消費者と生産者がともに満足度を高められる販売網の必要性を感じた。
そのころ、法人の代表理事を務める石川町の果樹農家大野栄峰(33)=大野農園=はある構想を描いていた。
農業をカッコいい職業にしよう―。
震災翌年の二十四年に東京都から石川町に戻り、リンゴなどを栽培する実家の果樹園を継いだ。周囲では担い手の高齢化が進んでいた。「このままでは農業を担う人材がいなくなる」との危機感が募った。
本来、農業は理想を追求しながら、思いを体現した農産物で消費者を笑顔にできる職業のはずだ。農業が抱かせる負のイメージを取り払うには、地元の消費者への発信力を強める枠組みが必要という考えに至った。(文中敬称略)