(4)【第1部 宝を生かす】田中豪さん(上) 女性と企業を結ぶ 子育て中の就労支援

県内で子育て中の二十~五十代女性の七割が一年以内の就労を希望-。郡山市の一般社団法人「スタンド・フォー・マザーズ」と同市の人材サービス会社が二〇一九年に千百三人を対象に実施したアンケートで、こんな結果が出た。既に働いている人を含めると、96%以上が働く意欲を持つ。
「幼い子を持つ女性の就労には課題が多い。支援が必要だ」。スタンド・フォー・マザーズ代表理事の田中豪(たけし)=(35)、郡山市=は二〇一六(平成二十八)年、同市日和田町に民間型ハローワーク「おしごと百貨店」を設けた。子育て中の女性向けに特化した求人を企業から集め、仕事を求める女性につないでいる。
おしごと百貨店では、スタッフが郡山市を中心に企業から子育て中の女性が応募しやすい求人情報を集めて求人票を作る。求人票には、勤務時間や転勤の有無、社員の育休・産休の取得状況など、独自に企業から聞き取った情報を記入し、壁に張って誰もが自由に見られるようにしている。公共職業安定所が出す求人票に比べ、子育て中の女性が知りたい情報をより分かりやすくまとめている。
求職者には無料で利用登録をしてもらい、希望する求人情報が見つかれば、メールや電話で知らせる。スタッフが求職者の相談に個別に応じるほか、就労時のマナーや扶養控除制度などについて学ぶ講座も開く。現在、約七百人が登録する。就職した人から「親身になって求人を探してくれた」と感謝の声が寄せられる。
子連れで気軽に立ち寄れる雰囲気をつくろうと、手作りベーグルとコーヒーを楽しめるカフェも併設した。カフェの収入はハローワークの運営費に充てる。レジに立つ田中は「カフェでコーヒーを飲んで休憩し、求人票を眺めるだけでもいい」と来場を呼び掛ける。
県内の昨年十二月一日現在の推計人口は百八十四万一千五百八十六人で、県は二〇四〇(令和二十二)年に百四十三万人まで減ると推計している。県によると、二〇四〇年の就業者は六一・五万人と、二〇一五年の九二・二万人の三分の二程度まで落ち込むとみられる。働き手の確保は深刻な課題だ。
田中は、地域の「宝」である人材を生かし、女性の活躍できる場を広げることが重要だと考える。「子育て中の女性が働ける場が増えれば、人手不足解消につながり、地域社会に活力が生まれる」。発想の原点には、東日本大震災での被災地支援の経験があった。(文中敬称略)