(5)【第1部 宝を生かす】田中豪さん(中) 被災地支援が原点 子ども服、オムツ送る

宮城県石巻市の避難所に届けられた支援物資を手に取る女性ら。田中さんら有志でつくる団体が支援した=2011年12月
宮城県石巻市の避難所に届けられた支援物資を手に取る女性ら。田中さんら有志でつくる団体が支援した=2011年12月

 郡山市の一般社団法人スタンド・フォー・マザーズ代表理事の田中豪(たけし)=(35)=が市内で子育て中の女性の就労支援事業を始めたのには、「ギャルママ」と呼ばれる若い女性を扱った雑誌の編集経験が関係している。

 田中は京都市出身。大学卒業後、二〇一一(平成二十三)年三月に東京都内の編集プロダクションに入社する。当時、金髪や派手な服装のギャルママは、世間から冷ややかな視線を向けられていた。子どもを公園デビューさせたくても仲間に入れてもらえず、地域で孤立していた。雑誌の編集を通じて、全国には約千のギャルママサークルがあり、情報交換しながら支え合っている実態を知る。偏見にめげず、日々の生活を充実させようとする姿に感心した。


 東日本大震災の発生を受け、被災地支援を目的とした任意団体「スタンド・フォー・マザーズ」を有志で設立し、翌年に法人化した。全国のギャルママサークルに呼び掛け、被災者が必要としている子ども服やオムツなどを集め、宮城県を中心に避難所に届けた。メーキャップアーティストを連れて同県石巻市の避難所を訪問し、子育て中の女性の被災者にメークを楽しんでもらった。

 被災地での経験を踏まえ、若い女性の支援を続けようと考える。日本財団の協力で全国の子育て中の女性の悩みや困りごとを調査した。「働きたいけど、働く場所がない」といった就労に関する悩みが多かった。何か力になれないか-。郡山市に本社を置く人材サービス会社の代表と知り合いになり、議論を重ねた。子育て中の女性に特化したハローワーク(職業紹介施設)の開設を思い付く。


 県内各地を回り、活動拠点を探した。国勢調査によると、二〇一〇年十月から二〇一五年十月まで五年間の県内の市町村別の転入者数と転出者数は、いずれも郡山市が最も多かった。転勤族の夫と一緒に転入する子育て中の女性の数も多いと見込む。少子高齢化が進む中で働き手を必要としている中小企業も、かなりの数に上ると予想する。「まず、郡山で女性の就労支援を始めよう」。手探りの中、新たな事業に乗り出した。(文中敬称略)