戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―

【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第2部・林業(10) 進まない森林整備 災害のリスク高まる

2022/01/05 09:33

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 東京電力福島第一原発事故により、林業の担い手不足に拍車が掛かり、森林整備が滞っている。県内の森林整備面積の推移は【グラフ(1)】の通り。原発事故発生前は毎年一万二千ヘクタール程度だったが、原発事故発生後に半減した。その後は横ばいの状態で、直近の二〇一九年度は五千七百七ヘクタールとなっている。

 森林整備には間伐や除伐、植栽、下草刈りなどの項目がある。このうち間伐などの面積は原発事故直後の二〇一二(平成二十四)年度と比べるとやや増えた。市町村が国、県の財政支援を受けて管理目的の伐採などを施す「ふくしま森林再生事業」の効果とみられる。

 一方、植栽や下草刈りなどの動きは鈍い。二〇一九年度は千八百二十ヘクタールで、原発事故直後よりも減少している。伐採作業は高性能機械の導入で担い手不足を一定程度補える。一方、植栽や下草刈りは作業の負担が大きい上、機械化が難しい面があると林業関係者は明かす。塙町の真名畑林業社長の菊地正人さん(61)は「人手さえあれば、さらに森林整備を進められるのだが」と悔しがる。

 県森林組合連合会は、森林資源は(1)切る(2)使う(3)植える(4)育てる-の循環が重要だとする。だが、担い手不足をはじめ、木材価格の低下、森林所有者の関心の低下などの要因が絡み、循環が鈍っている。

 この結果、林齢が高い樹木の比率が極端に高まっている。県内の民有林(人工林)の林齢別面積は【グラフ(2)】の通り。林齢五十一年以上の面積が十一万七千ヘクタールで全体の57%を占める。三十年以下は計一万四千ヘクタールで7%にとどまる。

 森林整備が滞ると、土砂災害の発生リスクが高まる。樹木の根の張りが弱ったり、下草が生えなくなったりして土砂が崩壊しやすい。地球温暖化にも影響する。樹齢の高い木は二酸化炭素の吸収率が低く、植栽や育林を進める必要がある。同連合会専務の松本秀樹さん(64)は「森林整備を進め、森林資源の循環利用を促していく必要がある」と話す。

 原発事故は、シイタケ原木にも影響を与えた。阿武隈山地は国内有数の産地だった。