戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―

【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第3部 除染(17) 傾斜地の作業困難 「技術の開発進めて」

2022/02/24 11:30

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里山再生事業が行われている飯舘村の村民の森「あいの沢」。傾斜地は除染が手つかずの状態で、新たな技術開発を求める声は多い
里山再生事業が行われている飯舘村の村民の森「あいの沢」。傾斜地は除染が手つかずの状態で、新たな技術開発を求める声は多い

 飯舘村深谷地区にある村民の森「あいの沢」は、広大な敷地にため池やキャンプ場、自然体験学習館などを備える。「愛」をテーマとした句碑なども人気で、村が誇る観光名所だった。東京電力福島第一原発事故発生後、一部の場所を除いて休園が続いている。憩いの場を取り戻そうと、二〇二〇(令和二)年度から里山再生事業が行われている。

 復興庁などは二〇一六(平成二十八)年度から、森林環境の回復を目指す里山再生モデル事業を十四市町村で実施した。放射線量減少などの効果が認められたとして、二〇二〇年度から対象を四十八市町村に拡大した里山再生事業に移行した。森林公園やキャンプ場、遊歩道などで、除染、森林整備、放射線量測定のうち、二つまたは三つを組み合わせる。

 あいの沢では二〇一七年度からモデル事業となった七十二ヘクタールのうち、未着手だった約五十一ヘクタールが里山再生事業の対象となった。ただ、行われているのは森林整備と放射線量測定で、除染は外された。村は除染を要望していたが、環境省は対象区域が人の出入りする場所から二十メートル以上離れており、二十メートル以内でも傾斜地で機械が入れない、と理由を説明したという。

 同村小宮地区の野手上(のてがみ)山の約六十六ヘクタールでも、二〇二一年度から里山再生事業が始まったが、除染は平たんな登山者用の駐車場周辺に限定された。山林は傾斜が厳しく、作業が難しいとの理由で手つかずだ。二〇二二年度に予定する間伐も作業範囲が限られ、放射線量低減の効果は限られる。

 急斜面の場合、地表の落ち葉などの堆積物を取り除くと、治水機能が低下し土砂崩れを引き起こす恐れがある。環境省が森林全体の除染に消極的な理由の一つだ。しかし、飯舘村の75%が森林で、起伏のある場所が多くを占める。斜面にも対応できる除染技術の研究はいっこうに進まない。三瓶真村産業振興課長は「山林、里山の除染が可能となるように、技術開発を進めてほしい」と訴える。

 里山再生事業は一市町村につき複数箇所の実施を認めている。地元が求める事業の継続には、安定した予算確保が求められる。