戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―

【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第3部 除染(20) 除染の議論が停滞 「感覚のずれ」大きく

2022/03/03 10:24

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除染の検証などを行う国の環境回復検討会。2019年3月を最後に開催されていない
除染の検証などを行う国の環境回復検討会。2019年3月を最後に開催されていない

 「生活圏への放射性物質の流出は確認されなかった」「堆積した葉などの除去で土砂流出や樹木への悪影響のおそれがある」。政府は二〇一五(平成二十七)年十二月、有識者による環境回復検討会の議論を経て、主に二つの理由から日常的に人が立ち入る場所など以外の森林除染を見送る結論を出した。県内の林業関係者は「東京電力福島第一原発事故発生後、国との温度差を最も感じた場面だった」と振り返る。

 国は森林除染の対象範囲を定めるための実証事業などに時間と予算を割いてきた。関係省庁や研究機関は放射性物質の森林からの流出率は最大でも0・25%程度にとどまることや、地表の堆積物を取り除いた場合、降雨時の土砂の流出量が三倍となる結果を踏まえ、生活圏付近以外の除染は必要性に乏しいとした。検討会でもおおむね異論は出なかった。

 地元との感覚のずれは大きく、「森林を汚れたままにしていい理由にはならない」と憤りの声が広がった。国は約三カ月後に里山まで除染の範囲を広げ、「放射線量低減のための調査研究に引き続き取り組む」との指針を打ち出した。

 里山再生モデル事業の開始から五年が経過するが、地元が望むほど放射線量が下がっていない場所が出てきている。除染範囲の検証などを行う検討会は二〇一九年三月を最後に三年近く開かれず、議論は停滞している。環境省の担当者は今後も必要に応じて検討会を開催すると強調する。ただ、帰還困難区域以外の面的除染が完了している点から技術開発などの検討については一定の「区切り」が付いているとの認識だ。

 林野庁は近年、県内の森林再生に三十億円超の予算を投じ、放射性物質分布の研究、林業再開に向けた実証、森林整備への支援などに取り組んでいる。ただ、奥山の除染範囲拡大に向けた新たな研究や実証などは進んでいないという。

 飯舘村は国の支援を受けて間伐による独自の森林再生に乗り出した。除染の先行きが不透明なためだ。同村の林業の男性は「森林除染の範囲決定に加え、その後に打ち出された里山除染も期待外れだった。国は被災地の声に耳を傾け、さらなる支援を続けるべきだ」と訴える。

 専門家は現行法令の課題を指摘し、国が森林再生のための長期的な仕組みを作るべきだと提言する。