戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―

【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第5部 山の恵み(38) 影響多方面に及ぶ 経済、暮らし、文化に

2022/05/06 11:10

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 東京電力福島第一原発事故に伴う野生キノコや山菜の出荷制限は、農林業だけでなく、地域経済や観光、暮らし、文化などにも影響を及ぼしている。

 出荷制限は、食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された場合、政府が原子力災害対策特別措置法に基づき市町村単位で出している。

 野生キノコの制限の状況は【図】の通り。県内59市町村のうち、48市町村では現在も全品目で制限が続いている。会津若松、只見、西会津、柳津、三島、昭和、会津美里の7市町村は一部の品目で出荷制限の解除要件をクリアしたため「一部解除」となっている。檜枝岐、南会津、湯川、金山の4町村は制限が出ていない。

 山菜の出荷制限は野生キノコよりも細かく、品目ごとに設定されている。ワラビやフキ、フキノトウなどは会津地方や中通りを中心に半数以上の市町村で出荷が可能となっている。一方、コシアブラは檜枝岐村と湯川村を除く57市町村で制限されている。同じ市町村でも品目によって制限状況が異なるのは、品目ごとの性質の違いが、検査で放射性セシウムが検出される頻度に影響するためだという。

 出荷制限が出ている市町村では、野生キノコや山菜などの流通や販売に加え、他人への譲渡もできない。かつては山間部を中心に、山の恵みを家族と一緒に食べたり、知り合いに配ったりする文化があった。

 下郷町で飲食店「大内宿三沢屋」を営む只浦豊次さん(67)は「出荷制限が長く続けば、採取や調理の技が途絶えてしまう」と林産物をめぐる文化が衰退すると懸念する。

 県森林組合連合会専務の松本秀樹さん(64)は、森林の荒廃にもつながる恐れがあると指摘する。森林所有者がキノコ狩りや山菜採りで入山する機会が減り、山への関心が薄れて間伐などの森林整備への意欲が停滞するのだという。

 ただ、こうしたさまざまな分野への影響の全容把握は難しいとみる。国や県は、野生キノコ、山菜の生産量や消費量について、野菜などの栽培品のように詳しい統計を取っていないためだ。

 出荷制限が県内の大半の市町村で続いている一因には、野菜などに比べた解除要件の厳しさがあるとの見方もある。