今を生きる 花壇に復興の願い 「彩り絶やさない」あるじ失った畑再生

■いわき・平薄磯の住民有志
東日本大震災で壊滅的な被害を受けた、いわき市平薄磯地区。今なお、がれきの撤去作業が続く豊間小と豊間中の通学路の一角に、10坪ほどの花壇ができた。あるじを津波で失い荒れ果てていた畑を、住民有志が復興のシンボルにしようと花壇に再生した。黄、赤、オレンジなど色取り取りの花が咲く花壇には「がんばろう!薄磯」と書かれた手作りの看板が立つ。復興への願いを忘れず、犠牲者の霊を慰めるためにも人々は一年中、花を絶やさないつもりだ。
花壇になる前の畑は、近くに住む女性=当時(87)=が所有していた。毎年、季節の野菜などを大切に育てていたが、女性と家族は津波の犠牲となり、畑も泥流にのまれた。その後、畑は雑草が生い茂り、山のようながれきであふれていた。
薄磯地区には震災前、260世帯約760人が住んでいたが、現在は辛うじて家屋が残る20世帯に約70人が暮らしている。
「復興のシンボルをつくろう」。女性と顔見知りで近所に住む鈴木幸長さん(59)=民宿経営=や菅波守夫さん(78)君江さん(69)夫婦ら住民10人が、女性の遺族の了解を得て9月下旬から畑を花壇としてよみがえらせる作業を進めてきた。
震災から7カ月が過ぎ、がれきは次々と撤去された。しかし、かつて家屋が並び人々の活気があふれていた古里の面影はまだ戻らない。鈴木さんは「それでもいつか、必ず古里を復興させたい。花壇は地域再生のシンボルにしたい」と願う。
住民有志は、年間を通じて季節の花を植える計画を立てている。