今を生きる 宝物で夢へ再起 映画ポスターコレクションみらい映画祭会場で展示 客の笑顔勇気に

■小名浜の自営業 伊藤康吉さん
「男はつらいよ」「青い山脈」「アタックNo1」-。懐かしい映画のポスターが19日、「福島こどものみらい映画祭」の会場となった会津若松市の会津大講堂に並んだ。いわき市小名浜のアンティークショップを津波で流された伊藤康吉さん(49)が、残ったポスターを飾った。足を止めて見入る来場者に、伊藤さんは再出発の勇気をもらった。
伊藤さんは小学6年生のころから映画のポスターを集め始めた。映画館に通って上映が終わった作品のポスターを譲ってもらい、大人になってからはオークションなどで手に入れた。日活や東映、東宝の邦画を中心に約600枚を収集していた。
いわき市泉ケ丘の自宅で駄菓子店を開いていた。収集した映画ポスターや古いおもちゃを見てもらおうと、2年前に小名浜にオープンさせたのが2号店のアンティークショップだった。しかし、津波で店は壊滅。ポスターをはじめ、ブリキのおもちゃやミニカーなど数千点が流された。
しばらくはショックで後片付けも手に付かなかった。そんな時、市内新舞子の親戚宅に保管していたポスターが、間一髪で津波を免れ、無事だったことが分かった。「これで映画祭にポスターが出せる」。えりすぐりの100点を持参した。
「これ、見たな」「あー、懐かしい」。年配の夫婦が目を細める。子ども連れの父親が息子に「巨人の星」のストーリーを話す。「こんなに喜んでもらって...。いつか、映画ポスターのミュージアムを開こう」。伊藤さんは失いかけた自分の夢を、もう一度追いかけたいと思った。