【県議選告示まで1カ月】避難者の所在確認困難 不在者投票用紙、郵送遅れ懸念

県議選の実施について質問が相次いだ県議会総務委

 東日本大震災の影響で延期された県議選は11月10日の告示まで約1カ月後に迫った。県選管委は県内外に避難した有権者の所在確認を急ぐ一方、投開票事務の円滑な実施に向け検討を急いでいる。しかし、6日に開かれた県議会総務委では、自主避難者の把握や不在者投票をめぐり選管委側が答えに窮する場面が見られるなど、「未知の体験」となる選挙の実施に不安が色濃く漂った。

■99・55%

 「避難した有権者の把握は99・5%、いや、99・55%に達しました」。8人の総務委員を前に答弁した県選管委職員は、9月末現在で避難区域となった双葉郡など12市町村の所在不明者が1000人を切った実績を報告。国の全国避難者情報システムへの登録が進み、完全把握が間近に迫った現状を強調した。しかし、県議選候補者となる委員の追及は厳しい。避難者が転居を繰り返す傾向があることを念頭に、「本当にその場所に住んでいる確証はどう得るのか」「同じ世帯内でも別々に分かれて避難しているケースもある。どう対応するのか」と迫った。

 選管委側は、県議選のお知らせを事前に郵送することで所在確認を徹底する意向を示したが、返送されてきた場合の対応について明確に答えることはできなかった。

 放射線の影響を恐れ、県内外に自主避難している有権者の所在確認についても質問が出た。福島、郡山、伊達など都市部では把握が進んでいないためだが、選管委側は沈黙。常任委終了後、選管関係者の1人は「義援金や借り上げ住宅の申請でもない限り、居場所をつかむのは難しい」と打ち明けた。

■間に合うのか

 総務委では、避難者が県内外で行う不在者投票についても疑問が投げ掛けられた。

 公職選挙法の規定で、県内の市役所・役場で不在者投票を行う場合の終了時刻は11月19日午後8時、県外では同18日午後5時となる。県議選は原則、即日開票となるが、20日夜の投票終了時刻までに投票用紙を入れた速達郵便が届かなかった場合には、1票としてカウントされずに終わるという。

 委員から郵送の遅れを心配する意見が出たが、選管委側は「早めの投票を促すために、告示日を一日前倒しした」と説明するにとどまった。

■個人情報

 避難者に対する選挙運動も手探りだ。

 総務委で質問に立った双葉郡選出の委員は、市町村が避難者名簿を公開していないことへの不満ものぞかせた。選挙人名簿については、公職選挙法で候補者、政治団体が閲覧することを認めている。しかし、県選管委によると、県内市町村は個人情報保護を目的に避難者名簿を公開していないという。

 この委員は、仮設住宅で街頭演説する場合の許可や、ポスター掲示についても見解をただしたが、選管委は回答を控えた。

 全ての常任委の審議が終了した後の自民党控室。総務委でのやり取りを知った県議の1人は「投票所への入場券が避難者に届かないケースも十分あり得る。訴訟でも起こされたら、県選管委はどう責任を取るのか」と表情を曇らせた。

【背景】
 今年4月の統一地方選で行われる予定だった県議選は、東日本大震災と東電福島第一原発事故を受けて延期された。統一選延期を定めた特例法の期限は9月22日までだったが、県選管委は「県内での実施は難しい」と判断し、再延期を総務省に要請。これを受け、12月31日までの再延期を認めた特例改正法が成立した。県選管委は市町村から意見を聞き、職員派遣と財政支援を条件に年内に実施することを決めた。告示日は1日前倒しされ11月10日、投票日は11月20日。大熊町長選・町議選、相馬市議選、川俣町議選、広野町議選、双葉町議選、新地町議選、川内村議選、葛尾村議選が同時選となる。