【県立高募集定員発表】中3、志望校に戸惑い サテライト校「生徒集まるのか」

来春の県立高校全日制の募集定員が決まり、相双からの避難者が多い県北、会津、いわき各地区の一部の高校は定員が増やされたが、中学3年生は不透明な受験動向に戸惑いが広がっている。一方、定員が大幅に減らされた相双地区のサテライト校。多くの希望者は見込めず、受験生の確保に苦慮している。
■倍率が心配
14日夜、福島市内の学習塾では来春の受験を控える中学3年生が講師の板書を黙々とノートに書き留めていた。集中した表情とは対照的に、例年と状況が異なる受験に不安が広がっている。
福島高を目指している女子生徒は「合格ラインの目安が分からず、対策が取りにくい」と悩む。相双地区の受験生で志望者は増えることが見込まれるが、定員は増えなかった。「予想はしていたが...。合格を目指して頑張るしかない」と気を引き締めた。
郡山市の熱海中の男子生徒は市内の進学校の受験を決めたが、親や担任から倍率が高くなると言われているという。「合格できるか心配。プレッシャーは大きい」と文化祭の準備をしながら正直な思いを漏らした。
相双地区の中学生にとって、進学先は家庭の事情もあり複雑だ。三春町にある富岡町の富岡一・富岡二中の仮校舎に通う男子生徒は通いやすさなどを考え、郡山市内の高校を志望した。「震災後、1カ月は勉強する時間がなかった」と学習の遅れを心配しつつ、「倍率は高くなるかもしれないが絶対に合格したい」と意気込む。
会津若松市の大熊中の女子生徒はいわき地区への進学を決め、家族でいわき市に引っ越す予定だ。「友達がいる会津に残りたい気持ちもある」と複雑な心境を打ち明ける。
楢葉町からいわき市に避難している男子生徒は「先輩からサテライトは部活動に集中するのは難しいと聞いている」と市内の高校の志望を決めた。ただ、いわき地区では湯本高と平工高しか定員が増えなかったことに「倍率が心配」と表情を曇らせた。
■定員は暫定的?
福島大人間発達文化学類長の中田スウラ教授(教育学、教育社会学)は今回の募集定員を「各地区の中学生数に合わせた暫定的な対応ではないか」とした。相双地区のサテライト校の定員が大幅に削減されたことについて「相双地区の復興に欠かせない人材の育成を見据えると、今後、定員を丁寧に修正する必要があるだろう」と語った。
福島市にある能開センターの曽根中哉県本部責任者は県北、会津、いわきの一部の高校で定員が増えたことについて「志願先の選択で迷う生徒も出てくる」と見込む。ただ、相双地区の生徒が加わる影響については限定的とみており、「各地区のトップの進学校は競争率が上がるかもしれないが、大きな倍率の変動はないと思う。前向きに学力を付けることが大切だ」と話した。
■志願確保
「生徒が集まってくれるのか」。募集定員を半分に減らした双葉翔陽高の教員の一人は不安げだ。
総合学科の同校は人文科学や情報ビジネスなど専門的な科目の選択ができることが魅力の一つだが、現在、4カ所に分かれたサテライト校では教員不足で実施できていない。いわき市のいわき明星大に集約される来年度は、選択科目の再開を目指すが、使用できる教室数は不透明で、実現できるかどうかは分からないという。
二本松市の安達高といわき市の好間高をサテライトにしている浪江高も募集定員が半分になる。来春から本宮市にサテライトを集約し、本宮高に整備する仮設校舎で授業をする。高梨洋史校長は「本宮市は県北、県中地区に避難する人には通学しやすい場所。生徒や保護者に利点をアピールして志願者を確保する」と話す。
■死活問題
14日、いわき市で開かれた私立高・高等専修学校説明会。「生徒が集まらなければピンチだ」。各校の入試担当者は危機感を募らせながら自校の魅力を保護者らに懸命にアピールしていた。
県私立中学高校協会によると、県内の私立高校経営は除染費用や生徒減少による収入ダウン、震災で破損した校舎の補修で厳しさを増している。子どもの県外避難が拡大する中、入学者が減少すれば死活問題につながりかねない。
県内の私立高の募集定員は前年とほとんど変化はなく、「生徒の動向が見えない」と関係者は指摘した。