馬場さん(浪江)が教室再開 相馬 悲しみ乗り越え生徒集う 10カ月ぶり笑顔のフラ 復興の絆つなぐ

暖かな日が差す相馬市の相馬カルチャーセンターで15日、ハワイアンの名曲「エピリマイ」が流れる。「フラを通じ復興の絆をつなぎたい」。震災から10カ月ぶりに再開したフラダンス教室で主宰の馬場弥恵子さん(67)=浪江町=は生徒の笑顔に胸を熱くした。
馬場さんはフラガール1期生の小野恵美子さん=レイモミ小野フラスクール・いわき市=に師事し、ハワイアン・ネーム「コウ・ナネア弥恵子」を受けた。浪江町をはじめ相馬、南相馬、双葉の各市町で教室を開き、約50人の生徒が学んでいた。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が発生し、夫のキャロルさん(69)の実家がある米カリフォルニア州に避難した。カリフォルニアの青い空を見上げては、福島に残る生徒やきょうだいのことを思いため息をついた。時折、震災と原発事故が発生し混乱した記憶がよぎり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされたという。
慣れない環境で精神的に追い詰められた。「自分にできることは何か...」。自問自答の日々が続く。教室の再開を心待ちにする生徒からの手紙、恩師小野さんの励ましに少しずつ前を向けるようになった。
昨年11月中旬、単身で帰国した。生徒の生活は一変していた。教室の再開には壁があることをあらためて思い知らされた。だが、キャロルさんは背中を押した。「君にはフラダンスがある。時間はかかるかもしれないけど、それが君の使命かもしれない」
再開した相馬市の教室には、市内外から15人の生徒が集った。渡部信子さん(76)は「元気をなくし、踊りにも自信を持てなくなっていた。ずっと先生と一緒に踊り続けたい」と花飾りを着け満面の笑み。
流れた曲「エピリマイ」は「私の元に戻って来て」という意味がある。
馬場さんは「支えてくれた人への恩返しは始まったばかり。悲しみやつらさをフラダンスで、ともに乗り越えていきたい」と再起の一歩を踏み出した。