スイセン 復興の証し 塙の河川敷 再度順調に育つ 20日ごろ一斉に開花

スイセンの生育状況を確認する緑川さん(左から3人目)。右から2人目は天沼課長

■いわき市田人町 農業 緑川潔さん(76)
 「この花を見て、みんな元気を取り戻してくれっぺ」。いわき市田人町の農業緑川潔さん(76)は春の日差しの中で元気に育つスイセンを見守る。東日本大震災からの復興のシンボルとして塙町に贈られ、植え直された球根1万個は順調に育つ。間もなく花壇は一面、黄色の美しい花で彩られる。台風で球根が流されて7カ月。緑川さんは復興に願いを重ねる。
 緑川さんは12日、代表を務める環境美化ボランティア団体「田人アヤメ会」のメンバー約20人と共に道の駅はなわの河川敷を訪れ、スイセンの生育状況を確認した。スイセンが大好きだった、14年前に亡くなった妻千代さんをいとおしむように一株一株見て回った。流されずにわずかに残った株も黄色いかれんな花を咲かせている。まるで「困難に負けず、立ち上がろう」と見る人を勇気づけるかのように...。
 緑川さんは昨年7月、スイセンの球根約20万個を町に譲渡し、球根は河川敷に植えられた。しかし9月、台風により川が増水。大部分が濁流にのまれた。町は落胆の中、再び球根を分けてもらえるよう懇願した。緑川さんは思いを受け止め、11月に2度目の植え付けを行った。
 「まだ小さいが、何年かたてば立派になるだろう。スイセンは河川敷に咲くのが似合う。ここは環境も良いし観光の名所になってほしい」と緑川さんは期待を寄せる。
 緑川さんと町の橋渡し役を務めた天沼恵子町まち振興課長も「スイセンは地面にしっかり根を張る強い花。復興の証しとして町民を勇気づけてくれれば」と願いを託す。
 植えられたスイセンは緑川さんの亡き妻にあやかって「八千代スイセン」と名付けられている。20日ごろに一斉に花を咲かせ見ごろを迎える。