鎮守前に「絆」再確認 伝統の神楽奉納復活

津波被災地の特設会場で開かれた津神社の祭典で奉納された獅子神楽=相馬市原釜

■相馬・原釜の津神社祭典 2年ぶり
 「地域復興に向けた力強い一歩になった」。東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた相馬市原釜地区。15日、地元の津神社の祭典が、地域復興や住民の交流を願い2年ぶりに開かれた。地元を離れて仮設住宅で避難生活を送る住民と、地元に残って暮らす住民が一つに集い伝統の神楽奉納を見守る。みんなが地域の絆を再確認した。

 津神社は地区の鎮守として祭られ、高台にあるため古くから津波避難の目印ともされてきた。祭典は毎年春に地元住民の手で開かれていた。しかし、昨年は震災のためできなかった。「地域の伝統芸能を継承しなくては」「原釜に残った人と仮設住宅で暮らす人が交流する場を設けたい」。復活を求める機運が盛り上がり、地区の役員を中心に敬神部や地元企業、ボランティアグループなどが連携して準備を進めてきた。

 特設会場を津波被災地である相馬港近くの公園に設けた。神楽などの演じ手「敬神部」が獅子神楽や剣の舞などを奉納した。敬神部長の伊東正芳さん(58)は津波で自宅を失い、刈敷田第一仮設住宅で暮らしている。祭りの準備を進めるうちに支援の輪の広がりをしっかりと感じるようになったという。「祭りに向けてみんなの気持ちが一つになった。力を合わせて開いた祭典が地域再興の足掛かりになってほしい」。2年ぶりの演技に、さらなる伝統継承を誓った。

 津波で多くの地区住民が仮設住宅に避難している。現在は北原釜、南原釜で計140世帯が暮らす。この日は仮設住宅などから例年以上に住民が集まってきた。今も地元に住む熊谷秀治区長(60)は「久々に活気が戻った。これからも原釜の絆を大切にしていきたい」と喜んでいた。

 この日は市内の他の地区沿岸部で祭礼を復活させていた。