避難飼い主癒やす 悩み受け郡山に開業

■富岡で動物病院経営 渡辺正道さん(52)三智子さん(53)
富岡町で20年以上にわたって動物病院を営んでいた獣医師の渡辺正道(せいどう)さん、(52)三智子さん(53)夫妻=郡山市方8町=は先月、郡山市富久山町に動物病院を開業した。東京電力福島第一原発事故のため避難して1年余り。「私たちを頼りにしている双葉郡の被災者がいる。ペット診療を通じ飼い主の心の傷を癒やしたい」。夫妻は再出発に決意を新たにしている。
渡辺さん夫妻は昭和63年、富岡町夜の森に「わたなべ動物病院」を開業、分院のペットクリニックも町内で経営していた。原発事故直後は、顧客から預かった犬や猫を病院に残し、いったんは避難したが、正道さんが4回にわたって富岡町に戻り、動物を救出した。昨年7月から郡山市内の借り上げ住宅で次女怜菜さん(16)=安積黎明高2年=と3人で暮らしている。
郡山市に避難後、夫妻の元には「動物病院を再開してほしい」という声が数多く寄せられた。避難先でペットの悩みを抱える飼い主も多く、夫妻は1日も早く再開したかった。テナントの入居条件が厳しく物件探しは難航したがようやく3月末に再開にこぎ着けた。
正道さんは県動物救護本部三春シェルター管理獣医師としての仕事が多忙のため、診察は主に三智子さんが担当する。
新病院の待合室の壁には、富岡町の桜の名所・夜の森地区の写真が飾ってある。夫妻の動物病院は、その桜並木の通り沿いにある。「富岡の病院は必ず再開させる。そのためにも今は郡山で頑張る」。正道さんは満開の桜並木の写真に帰還を誓っている。
問い合わせは郡山市富久山町久保田太郎殿前14の1、わたなべ動物病院・丘の上ペットクリニック 電話024(943)5111。