苦難越え 走り続ける 原町に新店舗開店

原町区に開店した「ネクスト」。川村社長(右)と長男の英則マネジャー

■小高の自動車販売会社社長 川村秀夫さん(62)
 南相馬市小高区の川村自動車販売は、同市原町区下高平の6号国道沿いに「良質車専門店 ネクスト」をオープンさせた。「負けてはいられない」。新車、中古車、サービスの総合店舗。東日本大震災の津波が店舗を襲い、東京電力福島第一原発事故による警戒区域指定の二重苦を克服して、再出発の拠点となる。
 川村秀夫社長(62)は小高区の本社で震災に遭った。社屋裏の川が激しい勢いで逆流するのを見て、車で避難した。JR常磐線をまたぐ陸橋の上で、間近に迫る黒い水が見えた。「あと1分遅れていたら...」と冷や汗が出た。
 「車を何とかしてほしい」。避難した客から毎日のように依頼された。「客を裏切ることはできない」と、昨年4月に原町区金沢に仮店舗を構えた。預かっていて津波をかぶった車をきれいに整備して客に戻す仕事を最優先にした。県中古車販売協会長を務めるプライドがあった。全国に避難した従業員15人は「どうしても戻って仕事がしたい」と申し出た。
 昨年10月に宮城県に小型車販売を扱う大河原店を開店した。津波被害を免れた小高区の車検指定工場も今年5月25日に車検業務を再開している。
 水没したパソコンのデータ復旧、新店舗の決定など「ネクストの開店まで、1歩進んで2歩下がるような毎日だった」と総合マネジャーの長男英則さん(38)。次男良和さん(36)は大河原店長を務める。「大震災の中でも、世代交代を確実に成し遂げなければ」。川村社長は2つの新店舗を軌道に乗せるため、走り続ける。