長女と歩む「自分の道」 あす原町に新美容室開店 待合室を交流の場に

新店舗の準備に大忙しの渡部邦子さん

■浪江から避難 渡部邦子さん(50)
 東日本大震災前まで浪江町西台谷地で「美容室わたなべ」を営業していた渡部邦子さん(50)とエステティシャンの長女由佳理さん(22)は11日、南相馬市原町区に新店舗をオープンさせる。避難から1年5カ月を経て「自分の道を歩もう」と、南相馬市原町区での再スタートを決断した。
 邦子さんとタクシー運転手の夫隆夫さん(53)、夫の父隆行さん(78)、長男隆浩さん(24)、由佳理さんの家族5人の暮らしは3・11で一変した。
 乗用車で避難した津島地区での食事はおにぎり1個。高い放射線量を知らず、外を歩いていて防護服姿の警察官に「車の中に入りなさい」と注意を受けた。3日目、姉夫婦が迎えに来てくれて相模原市の親類宅に移った。
 犬を4匹飼っていたため仮設住宅に入れず、福島市野田町の借り上げ住宅に落ち着いたのは6月だった。
 どの土地に生活の基盤を置くか悩む日々が続いたが、以前の顧客からは「行きたい美容店がない」「友達がなく話ができない」などの声が届くようになった。元顧客の小高区民が多く暮らし、浪江町にも近い南相馬市への転居を決めた。昨年東北学院大を卒業した隆浩さんの就職先が仙台市に決まったことも、南相馬での新生活を後押しした。「原発は近いけど、八木沢峠を下りるとほっとする」と邦子さんは語る。
 店の6畳ほどのスペースを待合室兼談話室にした。冷蔵庫、電子レンジ、ポット、ゲルマニウム温浴設備を備えた。店に来た人が何時間でも愚痴をこぼしてストレスを解消できる場所にしたいと願っている。
 美容室と着付け、ハワイアンロミロミ(エステ)の営業時間は午前8時半から午後6時だが、予約があれば営業する。定休日は月曜と第3日曜日。はらまち斎苑愛月記の北隣。電話は090(8613)5386。