食文化継承、再生へ第一歩 三春に仮事務所

加工技術や食文化の継承を目指し、仮事務所を開いた協議会の関係者

■葛尾村いきいき交流促進協
 東京電力福島第一原発事故による避難で活動を休止していた「葛尾村いきいき交流促進協議会」が7日、避難先の三春町鷹巣に仮事務所を開設した。農産物加工や郷土料理の継承などを再開し、避難中の村民の交流の場としても機能させる。
 協議会は農業を軸とした村づくりを目指す農家有志ら約40人で平成21年に結成した。翌年からは村の農産物加工販売所を運営し、高原野菜や山菜、豆腐、こんにゃく、米粉ケーキ、かぼちゃコロッケなどの加工品を扱っていた。同年秋に郡山市にアンテナショップ「えにし堂妙千屋」を開くなど軌道に乗りつつあった活動は原発事故で中断を強いられた。
 「避難が長引けば栽培技術や食文化が失われる」。中村健彦会長(67)ら協議会のメンバーは昨年夏、村の役場機能が移転した三春町の休耕地を借りて野菜作りを再開した。今年に入り仮事務所用の空き家と土地を確保し、交流施設「えにし堂」とプレハブの加工所「えにし堂工房」を設置し、調理機器を村から運び出した。各地に散らばる村民同士の憩いの場や地元住民との交流拠点にしようと、休憩室や談話室を設けた。
 7日は会員や村職員が地元住民を招いてお披露目会を開いた。かぼちゃのスープやきゅうりの漬物など会員が育て、調理した料理を振る舞い、バーベキューを囲んで旧交を温めた。
 加工所は当面、漬物やジャムなど調理技術の講習会、会合への料理の提供などが活動の中心となるが、将来的には一般販売の再開も見据える。中村会長は「完全復活ではないが、第一歩を踏み出せた。村の再生に貢献する施設にしたい」と前向きに話している。