安全でおいしい豆腐を 一時避難 きょう再オープン

「安全でおいしい豆腐を作りたい」と再オープンを決めた小原さん

■香川出身、高郷で店舗経営 小原直樹さん(53)
 喜多方市高郷町の小原直樹さん(53)は「豆腐屋おはら」を10日、1年5カ月ぶりに再オープンする。脱サラして始めた豆腐作り。東京電力福島第一原発事故で一度は閉めたが、復興に役立ちたいと再開を決意した。「第二の創業」と位置付け、「安全で日本一おいしい豆腐」を目指す。

■県産大豆使用へ意欲
 香川県の出身。平成11年に東京都の広告代理店を退社し、豊かな自然に恵まれた旧高郷村が気に入り、妻朋子さん(51)と暮らし始めた。独学で豆腐の作り方を学び、12年6月に小さな店を開業。天然にがりを使い、煮る前の大豆を搾る昔ながらの「生搾り法」にこだわった。県外から購入客が訪れるほど人気を集めた。
 23年から、目標だった県産大豆100パーセントにするはずだった。原発事故後に店舗周辺の空間放射線量を測ると、局所的に数値の高い場所があった。商品の安全性に確信が持てず、昨年6月に店を閉めた。夫婦で佐賀、三重両県に避難し、アルバイトで生活費をかせいだ。
 避難先で豆腐屋を始めることも考えたが、定住すると決めた喜多方に戻れなくなると思い、踏み出せなかった。今年6月、三重県で職を得た朋子さんを残し、単身で喜多方に戻った。
 豆腐作りは諦めていた。前職で培った知識を生かし、携帯電話の表計算アプリを開発。新しいビジネスで生計を立てるつもりだった。しかし、夏のある日、水道水を調べてみると放射性物質は検出されなかった。再開への意欲が湧いた。「少しずつお客さんの信頼を取り戻していこう」
 当面は北海道産大豆を使う。「安全性に細心の注意を払いながら、徐々に県内の大豆を使っていきたい」と話す。豆腐作りが、風評被害に苦しむ県内農家を勇気づけると考えている。
 「豆腐屋おはら」に関する問い合わせは、電話080(1655)6868へ。