(6)未来へ人育てたい

■南相馬市ITシステムエンジニア 森山貴士さん 29 (下)
復興に貢献したいと南相馬市に移り住んだITシステムエンジニア森山貴士(29)は市内鹿島区の仮設住宅で暮らしている。朝夕、避難生活を送る住民と顔を合わせ、市の将来に思いをはせる。「地域の未来を支える人材を育てたい」
スマートフォンを活用し、避難生活を送る住民に地域の情報を発信する。全国の若者が注目する話題をインターネットで伝え、移住者を増やす...。ITを復興に活用できる技術者の育成が大きな目標だ。
「ホームページを効果的にデザインするには、どんな工夫が必要だろうか」。市内原町区にある小高商高仮設校舎に森山の姿があった。同校の特別講師として月1回程度、正規の授業を受け持っている。
大手IT企業のコマーシャルを見て、システムエンジニアに憧れる高校生は多い。しかし、「都会に行かないと技術は身に付かない」と諦めてしまう子どももいるという。南相馬にいても、夢を実現させてあげたいと考えている。ウェブサイト製作や画面のレイアウトの指導に熱がこもる。
小高商高3年の谷田部亮太(18)はシステムエンジニアを目指している。「IT業務は東京でなくとも、南相馬でできる。森山さんからそれを教わった」と声を弾ませる。神奈川県の大学への進学が決まっているが、将来は古里のためになるような仕事に就きたいと考えている。
森山の活動は多岐にわたる。商品を魅力的に売り出すコンサルタント業務も市民から引き受けている。
市内のフルーツショップから「ホームページを作ってほしい」との依頼が舞い込んだ。オリジナルのフルーツジュースを広くPRしたいという。ジュースが入る透明カップに店名を印刷しようと提案した。どこの店で売っているかを印象づけ、売り上げを増やす狙いだ。昨年4月にオープンした常磐自動車道の南相馬鹿島サービスエリアでも販売され、人気商品となった。
縁のなかった南相馬に移り住み、今年で丸2年となる。「住民の役に立ちたい。システムエンジニアとして地域で働くモデルをつくる」と誓う。(文中敬称略)