(7)遠野を売り込む

■いわき市 遠野高生徒会・家庭クラブ(上)
いわき市の山あいに広がる遠野町。冬休み期間中の8日、遠野高の生徒が次々と校門をくぐった。
地域の魅力を発信し、福島の安全をアピールするため、12、13の両日、北海道で繰り広げる札幌キャラバンの打ち合わせのためだ。生徒会や家庭クラブの男女10人が集まった。「福島県、いわき市にある遠野町を知っていますか?」。準備した遠野町・観光マップに時折り視線を落としながら、せりふを頭にたたき込んだ。
札幌キャラバンは県教委の「子どもがふみだす ふくしま復興体験応援事業」の一環だ。東京電力福島第一原発事故からの風評払拭(ふっしょく)に若者の力を生かそうと、平成27年度に設けられ、遠野高が実施団体の1つに選ばれた。
新千歳空港やJR札幌駅でキャンペーンを予定している。家庭クラブが地元産農産物を使って開発した6次化商品の「菊芋マドレーヌ」と「米粉サブレー」を無料で配る。遠野和紙で作った折り鶴のイヤリングも展示する。全国的な知名度を誇るスパリゾートハワイアンズの資料もそろえた。道庁や札幌市役所を訪問し、今年3月に北海道新幹線の開業が控えている道民に、いわきに足を運ぶよう呼び掛ける。
昨年秋から入念に準備を重ねてきた。市内外から地元のそば店を訪れる客にアンケートを実施し、古里の魅力を探った。人を包み込むような自然の豊かさ、農産物の味の良さ、遠野和紙に代表される伝統工芸...。北の大地で売り込む素材が出そろった。都内の広告業関係者らを講師に招いたワークショップを3回開き、どのようにすれば上手に情報が伝わるか話術を学んだ。
生徒会会計を務める1年の藤森千聡(ちさと)(16)は札幌キャラバンに心を躍らせている。
昨年8月の夏休みに行った東京キャラバンにも参加した。県のアンテナショップ「日本橋ふくしま館 MIDETTE(ミデッテ)」などでサブレーやマドレーヌを配り喜ばれたが、民話の里として知られる岩手県遠野市と勘違いされた。半年間でできる限り、PR方法を勉強してきたつもりだ。「今度こそ、いわきの遠野を売り込む」。瞳が輝いた。(文中敬称略)
※子どもがふみだす
ふくしま復興体験応援事業 県教委が平成27年度に創設し、約3000万円の予算を確保した。中高生らが主体となり、復興の現状を県内外に発信し、風評払拭(ふっしょく)に向けて取り組む活動に200万円まで補助する。被災者との交流事業なども対象としている。初年度は学校やPTAなど21団体の22件が採択された。