「霞が関」の都合(4) 工程表策定へ焦り 公有地提供は尚早

「中間貯蔵施設整備のため、公有地の提供を検討してほしい」。環境省福島環境再生事務所の幹部は1月下旬、郡山市で開かれた双葉地方広域市町村圏組合の管理者会議で切り出した。初めての申し入れに、大熊町長の渡辺利綱は「今はまだその段階ではない」と断った。
施設整備を急ぎたい環境省は大熊、双葉両町内の公有地を注視する。建設予定地約16平方キロのうち、町などが所有する公有地は約5分の1を占める。運動公園などのまとまった用地を確保できれば速やかに施設を建設できる。
一方、町にすれば、用地交渉が遅々として進まない中、町が率先して交渉する姿を見せれば、契約に慎重な地権者をあおっていると受け止められかねない。渡辺は「建設を受け入れた以上、協力しないわけではないが、地権者の交渉がある程度まで進まないと対応は難しい」との見方を示す。
環境省が公有地の取得を打診した背景には、中間貯蔵施設の整備や廃棄物搬入の見通しを盛り込む工程表策定への焦りが見え隠れする。工程表は今年度内にも公表する予定だ。将来的な計画を明示し、先行きに対する住民の不安や心配を解消する狙いがある。
しかし、地権者との用地交渉が進まず、契約や地上権設定に至った土地も点在している現状で詳細な絵図を描くことは難しい。公有地の取得も現時点では実現性が乏しく、施設整備については「目標値」として設定する方向だ。
12日の閣議後の記者会見。環境相の丸川珠代は工程表について「われわれが将来的な計画を示し、実現していくことが非常に大切だと思っている」と強調した。だが、具体的な公表時期や内容を問われると口を閉ざし、担当職員がマイクを引き継いだ。職員は政府全体で考えなければならない問題とし、公表時期も「今の時点でお答えするものはない」とあいまいな回答に終始した。
自らが所属する与党・自民党の閣僚経験者らから政治主導での整備加速化を求められた丸川だが、推進力が得られる新たな材料はまだ見つかっていない。(敬称略)