(9)《すしライス》和食の人気に活路 いなわしろ天のつぶ

郡山市にある日本貿易振興機構福島貿易情報センター(ジェトロ福島)に猪苗代町産米「いなわしろ天のつぶ」の海外販売策を相談した町プロジェクトチームの小板橋敏弘(47)に一報が入った。東北経済連合会などでつくる東北海外展開加速化協議会が平成二十七年二月にイタリア・ミラノで日本食の試食会を開く、との内容だった。
プロジェクトチームはミラノでの披露を目標に海外展開の準備を加速させた。
海外初出展に向けた取り組みと並行して町は「天のつぶ」を売り込む際の独自の販売戦略も練った。二十六年十一月、町内で生産者やJAあいづ(現JA会津よつば)職員らが参加して試食会を開いた。さらに試食会の参加者が県内外の飲食店に町産「天のつぶ」を持ち込み、最適な調理法や料理の検討を料理人に依頼した。肉厚で粒立ちが良い。食感は粘りが少なく、つやがある。料理人は「すしに合う」と評価した。
海外では健康指向の高まりを受けて素材の良さを生かし、過度に手を加えない和食の人気が定着している。すしはその代表格だ。プロジェクトチームは「スタンダードすしライス」としてアピールする販売戦略を立てた。
同時に海外で目に付く模倣商品への対抗策を講じた。知的財産の管理に詳しい郡山市の県発明協会の助言で国際商標登録に向けた手続きを進めた。海外取引では重要なポイントだ。経済産業省東北経済産業局の「TOHOKU地域ブランド創成支援事業」にも採択され、専門家からブランド力を高めるノウハウを学ぶ体制も整えた。
着々と海外進出の足場を固める中で商品名が決まった。「いなわしろ天のつぶ」。小板橋が苦し紛れで提案した海外展開が現実味を帯びてきた。(文中敬称略)