(10)《転機》視線は中東市場へ いなわしろ天のつぶ

好況に沸くドバイでは建設ラッシュが続く。販路開拓の好機が広がっていた
好況に沸くドバイでは建設ラッシュが続く。販路開拓の好機が広がっていた

 猪苗代町産米「いなわしろ天のつぶ」の海外初出展となったイタリア・ミラノでの試食会には地元の有名料理人や腕利きバイヤー、メディア関係者ら約六十人が出席した。平成二十五年の海外進出決定から二年がたっていた。販売戦略を担当する猪苗代町プロジェクトチームの小板橋敏弘(47)も現地入りして、調査の末に天のつぶの最適な調理法との結論に至ったにぎりずしにして振る舞った。

 「おいしい」「口の中で程よくほぐれる」。評価は上々だった。デビュー戦としては順調な滑り出しだった。


 ミラノへの渡航途中に小板橋はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに立ち寄った。中東でも和食がブームになっているとの情報を耳にし、状況を確かめるためだった。「スタンダードすしライス」を海外での売り文句にしている「いなわしろ天のつぶ」が普及する余地があるのではないかと考えたからだ。

 現地ではオイルマネーによる好景気が続いており、高級食材を使ったすしパーティーが家庭で人気だという。厳格な生産管理体制による高い品質を誇り、粒ぞろいの上、甘み、食感などがすしに合う特徴を売り込めば販路を開けるかもしれない。淡い期待を抱いた。

 訪問先の日本貿易振興機構(ジェトロ)ドバイ事務所でUAEのアブダビに本社を置く食品販売会社の紹介を受けた。思わぬ収穫だった。

 まだ商談の予定がないヨーロッパより中東に目を向けた方が得策なのでは-。輸出先の方針転換が頭に浮かんだ。(文中敬称略)