(16)【第2部 全量全袋検査】GAP 認証制度どうPR

農産物の生産工程での安全管理を審査する国際版、国内版の認証制度「GAP」。全量全袋検査に代わって県産米の安全性を保証し、風評払拭(ふっしょく)につながる存在にはなり得ないとの見方がある。
国際、国内版とも収穫した農作物の放射性物質検査を義務付けていないためだ。会津地方でコメ流通業を営む男性(41)は「安全性に配慮しながら生産しているという過程の証明にとどまる」と指摘する。
コメ農家が国際版「グローバルGAP」の認証を得るには「食品安全」「環境保全」など二百九項目に取り組む必要があるが、放射性物質対策は含まれていない。国内版「J-GAP」は百三十一項目の中に放射性物質対策に関する項目があり、土や水、肥料の安全性を確認するよう生産者に求めている。放射性物質検査を含む何らかの手段でコメの安全性を説明するよう定めているが、検査を必ず行う必要はない。
一方、県版「ふくしま県GAP(FGAP)」は九十七項目のうち三十項目が放射性物質対策がらみの内容となっている。「全量全袋検査を受検し、基準値以下であると確認している」ことが必須項目だ。
しかし、JA福島中央会や全農県本部はFGAPではなく、世界や日本の統一規格であるグローバルGAPとJ-GAPの取得を推奨している。県内のあるJA関係者は「FGAPは日本国内の一つの県が設けた制度。国際的に通用するかは未知数」と厳しく見積もっている。
グローバルGAP、J-GAPを巡っては、消費者や小売業者らに十分、認知されていないという実態も浮き彫りになっている。
認定NPO法人アジアGAP総合研究所が全国の男女約千人を対象に実施したアンケートでは、GAPを「知らない」とする割合が58%と過半数を占めた。「名前を聞いたことがある程度」は33%で、「知っている」は9%にとどまった。県南地方の農家の男性(57)は「苦労して取得しても、消費者らがGAPの内容をよく知らなければ、農産物の安全性の理解にはつながらない」との考えを示す。
GAPの認証を得るには、生産工程を記録し書類を作成する作業が必要となる。県内JAの幹部はGAPの普及に期待する一方、高齢農家を中心に取得が難しいケースも出ると見ている。「万が一、『GAPを取得していないから安全ではない』といった認識が広がってしまっては元も子もない。対策が必要だ」と訴えた。(文中敬称略)