(17)【第2部 全量全袋検査】提言 地域事情で見直しを 県農業振興審議会長・伊藤房雄氏

東京電力福島第一原発事故に伴う風評が続く中、県産米の安全性を保証してきた全量全袋検査。数年後に一部地域を除き、範囲が縮小される見通しとなった。福島のコメに安心感を持ってもらうためには、どのような取り組みが必要か。県農業振興審議会長を務める東北大大学院農学研究科の伊藤房雄教授は「地域の実情に応じて検査を縮小する在り方を考えるべき」と訴えている。
-県産米の全量全袋検査は開始から五年余りが過ぎ、分岐点に差し掛かっている。
「二〇〇一(平成十三)年、国内で牛海綿状脳症(BSE)感染牛が確認され、牛の全頭検査が始まった。検査対象は徐々に縮小されたが、収束には十年以上かかった。この例を踏まえ、県産米の検査期間は十年を目安とするべき-という指摘もあるが、個人的にはそこまで必要ないと考えている。検査を受けた全ての放射性セシウム濃度が三年連続で食品衛生法の基準値を下回っているためで、県は安全宣言を出すべきだ。ただ、これから営農再開が進む地域もあり、地域別でどう縮小すべきか考えた方がいい」
-検査体制を縮小する場合、行政には何が求められるか。
「『不安だから継続してほしい』と考えている消費者や流通業者に、これまでの検査結果などを分かりやすく伝えてほしい。コメ以外の農産物は全量検査をせずに流通している点も説明すべきだ。その上で、縮小すると決めた検討の過程を丁寧に紹介する必要がある。『県の内部で検討した結果』という曖昧な内容ではなく、誰にどのような意見を聞き、具体的にどういう経過を経て結論に至ったのかを公表するべきだ」
-どのような手法で県産米の安全性をアピールしていくべきか。
「福島の将来を担う中高生ら若者が、県産米の放射性物質対策や県内の状況を国内外に伝えてみてはどうか。例えば動画サイトのユーチューブで一分間の動画を作り、フェイスブックやツイッターなどSNS(会員制交流サイト)を使って発信する。テーマは『福島のコメの現在』などが考えられる。若者目線の動画が話題になれば、安全性の理解や風評払拭(ふっしょく)につながっていくだろう」
=第2部「全量全袋検査」は終わります