(6)【第1部 中山間地で】会津若松市湊地区 テレビが住民結ぶ

みなとチャンネルで地区行事の案内を見る田中さん夫婦
みなとチャンネルで地区行事の案内を見る田中さん夫婦
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 イベント告知や公民館の教室、ペットの写真…。テレビ画面に身近な情報が次々と映る。「話題が尽きねなあ」。会津若松市湊地区の自宅でテレビを見ていた田中仁(ひとし)=(68)=がつぶやくと、妻千枝子(69)がうなずく。画面は昨年十月に地区内で運用が始まった「みなとチャンネル」。テレビに専用の接続端末を取り付け、リモコンを操作するだけで地域の行事や市政などの生活情報、近くを走る四九号国道のライブカメラ映像などが二十四時間、無料で見られる。チャンネルは住民をつなぐのに役立っている。


 猪苗代湖西岸に集落が点在する湊地区。昨年十二月一日現在の人口は千七百八十二人で、六十五歳以上の住民の割合を示す高齢化率は40%を超える。

 チャンネルは、情報発信を通じ住民の交流を活性化させるのが目的だ。市が内閣府の補助で設置し、住民有志でつくる湊地区地域活性化協議会が各世帯への設置手続きを手伝っている。地区内の六百三十七世帯のうち四百五十世帯が設置を希望し、昨年末までに約百世帯が設置した。

 市が画面情報を製作・放映し、住民は協議会を通じて食のイベントや自然教室など、知らせたい情報をチャンネルに掲載できる。協議会が昨年十一月に開催した「もちそばまつり」は日程の告知や準備の様子、当日の模様を写真入りで紹介し、住民から反響があった。


 協議会は市の委託を受けて昨年十月に集落内の各戸と路線バス停留所を結ぶデマンドバス「みなとバス」の運行を始めた。今後、チャンネルの画面上で、リモコンのボタン一つで、みなとバスを予約できるようにする。

 住民の荒川清(92)はみなとバスで最寄りの路線バス停留所まで行き、市内の病院に通っている。みなとバスの運行前は、吹雪の中で路線バスを待っていたこともあり、新たな取り組みを歓迎している。チャンネルの補助事業は二〇一九年までだが、事業を継続するためには有料化や運営主体をどうするかが課題となる。協議会長の小桧山昭一(65)は「チャンネルは活用次第で住民が交流を深めるきっかけになる。住民のためにも続けたい」と力強く語った。(文中敬称略)