(7)【第1部 中山間地で】いわき市小川町 生活に電気自動車


いわき市小川町の会社員鈴木孝典(58)は週一回、町内にある電気自動車(EV=エレクトリック・ビークル)充電スタンドで自家用車から電気自動車に乗り換える。自分で育てている神事用のサカキを積み、市内三カ所の直売所に運んで販売する。電気自動車は自動車関連企業が実証実験として導入を提案し、住民でつくる「小川みらい協議会」が昨年七月から管理・運営している。「ガソリン代を考えれば自分の車よりお得。小回りが利いて運転しやすい」と、新たな生活の足になっている。
市北部の小川町は人口約七千人で、高齢化が進む。十キロほどの市中心部までは車で約二十分。土日は路線バスの運行がなく、最寄りのJR磐越東線小川郷駅発着の列車は本数が少ない。
運転免許はあるが自家用車を持っていない主婦や高齢者らの買い物、通院の足の確保が課題となっている。協議会はカーシェアリング(車の共同利用)による新たな交通手段を導入することにした。(1)ガソリン車に比べ利用コストが安い(2)荷物を運べる(3)停電時に電源になる(4)環境に優しい-などの理由で電気自動車の採用を決めた。ガソリンスタンドが減っているなどの地域事情も考慮した。
四人乗りで利用料は三時間五百円から。相乗りも可能で、免許はあるが車の運転が不安という高齢者が便乗できる。充電スタンドは太陽光発電で蓄電する。
サービス開始から半年がたったが、利用者はなかなか伸びない。協議会は二十四時間、予約なしで借りられるようにし、住民説明会を開いて利用を呼び掛けているが、反応は鈍い。電気自動車は二〇一九年二月で実証実験が終了する。協議会は期間終了後もサービス継続を検討しているが、利用者が増えないと採算面で継続は難しいという。
協議会副会長の丸山雄三(70)は「生活の足を確保しないと、ますます不便になる。利便性を周知し、利用者を増やしたい」と語る。課題解決に向け、手探りが続く。(文中敬称略)